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FW最終課題Ⅰ:世界は広いだろうか。

2022年11月からはじまったWinter Fellowship 2022-2023は、2023年2月に無事終了いたしました。毎週日曜朝にはオンラインでの議論、ワーク、瞑想があり、合わせて国内外の哲学者や心理学者、人類学者などの読書・作文課題を行いました。年明けには深い会津での冬合宿も開催されました。以下、参加者の「まこと」によるWinter Fellowshipの最終課題の作品をご紹介します。
最終課題:フェローシップでの学びをもとに「自己の変容の旅路」を描いてください。

 『世界は広いだろうか。』

 
世界は広いだろうか。狭いだろうか。
私たちの世界の広さは、私たちの認識によって決まる。世界は、私たちが日々主体的に構成しているものだ。一つ例を挙げよう。鉱物学者と、ただ散歩をする人とでは、石の見え方が違う。散歩をしている人にとってはなんの変哲もない石ころであったとしても、鉱物学者はそれを熱心に眺め、分類するかもしれない。人間に限らず、すべての生物が、一個の主体として具体的な世界を経験していて、その世界をユクスキュルは“環世界”とよんだ。さきの例からもわかるように、人間は、この環世界を行き来する能力が比較的高い。人間は鉱物学者にも天文学者にもなれる。この世界を認識するたくさんの方法を持っている。
だから原理としては、世界を広いと感じることもできるはずだし、実際にそう感じている人もいるだろう。しかし私たちは往々にして、自分のいる狭い環世界に安住してしまう。それは例えばこういう捉え方だ。
私はずっと日本にいるけれど、自分の住んでいる地球が、どんな場所かを知っている。世界地図も見たことがある。地球には砂漠があり、アマゾンがあり、氷河やタイガがある。長らく未知と言われていた地球の南の極にも、実は大陸があって、年中雪で覆われていることを知っている。分かっていないことも勿論沢山あるが、それらもすべて、いつかは科学的に説明のつく事象だと私たちは信じている。
あるいはこういった見方もできる。
私たちの生きている地球は、太陽系の中のいち惑星に過ぎない。その太陽系も天の川銀河の中の一つの集合に過ぎないし、銀河はそれこそ、星の数ほどある。宇宙は果てしなく広大で、人類はそのほんの一部分を知っているに過ぎない。ああ、私が毎日を過ごす領域は、なんて狭い場所なのだろう。毎日、地球の中でも日本という小さな島国の、東京の、それこそ決まった街を往復するだけの生活を送っている。
どちらの例でも、私は狭い世界を生きている。
世界を広くするにはどうしたらいいだろうか。
環世界を増やすにはどうしたらいいだろうか。
それは学びによってのみ達成される。
つまり広い世界とは、世界を深く捉えること、環世界を増やすことに他ならない。
ここでいう世界は、何も自然的なものに限らない。私たちが今暮らしている社会の仕組み、私たち人類の歴史、周囲の環境と自他の関係性についてこれまで人間が考えてきたすべてが、私たちの世界を広げてくれる。私が自分の環世界から出る手助けをしてくれる。私たちの認識は、世界は、意識しなければどんどん凝り固まってくる。自動的に、「世界なんてこんなものだ」としてしまうようになる。私たちの世界は、すぐに狭くなって、色を失ってしまうのだ。だが、それは怖いことでもある。地球的課題群といって海洋プラスチックや地球温暖化などを論じるとき、何かすべてがコントロール可能かのような、地球がとても小さなおもちゃであるかのような幻想を持っていやしないだろうか。
世界はくそ・・だと、すぐに思ってしまってはいないだろうか。そういう時こそ思い出してほしい。私たちの世界の狭さは、私たちの認識に大きく依るのだと。私たち自身に常に言い聞かせたい。「これは私が・・捉えている世界なのだ」と。
この視点に立つと、毎日が少し違って見えないだろうか。日々見ていた世界に、少しだけ光が差して見えないだろうか。自分の見ている世界に、自分の学びに、少しだけ謙虚になれやしないだろうか。
地球が球体であることすら知らなかった人類と比べれば、多くの環世界を手にしたはずなのに、私たちの多くは、世界を狭いと感じている。世界に対する畏怖と敬意を失っている。だから私はあえて、「世界は広い!」と声を大にして言いたい。

まこと

これまで軽薄かつ優秀な羊(William Deresiewiczの”excellent sheep”)として生きてきた、都内の高校2年生。課外活動をやるときも勉強をするときもある程度自分の存在を希釈して行動に打ち込んできた。ある時、このまま日々を積み重ねていったら、常に次のにんじんを食べるためだけに生きていくことになるのではないか、と気づかされた。そのため、立ち止まって内側を向く時間を作ろうと思い、フェローシップへの参加を決意。「かけがえのなさの消失」を最近はよく考える。

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