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Started on 8月 17, 2022

KOTOWARI 会津サマースクール 2022

現代の政治経済、科学技術を背景に、かつてないスケールと複雑さの問題が世界中で起きています。過去に人類が向き合ってきた課題は原因と結果の結びつきが比較的明確にできるようなものでした。しかし、現代の世界が直面している危機は、私たちが認知できる時間と空間の範囲を超えたところで、数多の現象が相互にからみあっていることを示しています。

政治経済、科学と技術、哲学と芸術、そして宗教。これら人類の営みを、日本の若者たちが「自然」を共通項に探究する。会津サマースクールは持続可能な時代を創る若者のための、本質探求の学び場です。福島県奥会津の山の中に、全国各地から20名の高校生、大学生たちが集います。少し先を歩く問いの探求者や実践者たち、また、志を同じくする同朋たちと語り合い、ときには森の中で一人静かに思索し、人生を生きる上での土壌を築きます。

今年のサマースクールで向き合う問いは「環境問題」と「科学技術」。今日、科学技術という言葉は、私たちにある種の相反する感情を抱かせるものとなりました。技術革新がもたらす進歩への信頼が「イノベーション」と謳われる一方、「人新世」という時代が象徴するように、自然を支配しようとする人間活動が環境に与える影響が無視できなくなっています。環境問題の解決には欠かせない一方で、科学の世界観に大きく影響された人間観と自然観そのものが、問題の根幹にあることを私たちは見逃してしまいがちです。

気候変動をはじめとする現代の環境問題は、より切迫して私たちに人間と自然との関係性を問うています。

「環境問題を生み出した科学の世界観とは何なのか?」
「どのように私たちの世界観と自然観を形作っているのか?」
「私たちはどのように自然と向き合っていくのか?」

答えのない探求を共にしていく同朋たちが、この夏、会津に集います。

DAY 1: Who am I? 

動画再生

初日は参加者が互いの価値観、考え方を知ることに重点が置かれました。数日間のプログラムで心を開いて共に学び合うための場が生まれるよう、年齢や知識などの心理的な壁を意図的に取り払っていく目的のアクティビティを行いました。事前課題のディスカッションを通して、環境問題のわかりやすい説明や結論を追い求めるのではなく、 また、自分の見方や立場を相手に押し付けるのでもなく、内省と対話を通して答えのない問いを深く探求していくための基本姿勢を身につけることができました。

Orientation + Discussion One:事前課題ディスカッション
 
環境と人間の関係性を問い直す事前課題『いちばん大事なこと(養老孟司著)』をもとに、私たちにとって環境問題における「問題」は一体何であるのか、について話し合いました。環境問題を語る上で切り離せない政治問題、人間と自然の関わり方の変化から生まれた人間の感性・思考の変化など、事前課題で述べられたポイントを再考しながら、各々の環境問題に対する考え方をシェアしていきました。
環境問題とはどのような「問題」を孕んでいるのか。気候変動や環境汚染は、なぜ「問題」なのか。仮にこうした問題が解決できた先に私たちは何を目指しているのか。このような答えの定まっていない問いをディスカッションを通して掘り下げていきました。問題が究極的にどこにあるのかについての現状認識を明確にしていった上で、実際に自分は問題解決のために何をどこまで犠牲にできるのかなど、素直な疑問を互いにぶつけ合って、白熱したディスカッションの時間となりました。
 
 
Personal Value Check-In:「自分を感じるとき」の対話
KOTOWARIにおける学びの柱の一つである「内省」を深めていくため、それぞれの参加者が「自分」を感じる『とき』をあげるとしたらそれはどんなときであるかを、互いに共有しました。
そもそも「自分を感じる」とはどのようなことなのか。その時に感じる「自分」とは一体何を指すのか。それぞれが独自に持っている自分の感覚や経験に意識を向けてもらい、それを言葉に置き換えてもらいました。それぞれの「自分」というものの感じ方や捉え方の多様性に触れて、共感した上で、環境問題を考える起点となる「自分」というものについての意識を向ける土台を作りしました。
<参加者の声>  
当初、私は自分を感じる瞬間を二つに分けた。まず、外部と繋がっているときである。人の価値観や背景を質問する中で自分について新たな発見があると感じたからだ。自我を感じるというか、新たな自分の一面を見つけられる感覚がある。次に、外部と遮断されているときである。例えば、私が幼い頃から続けている水泳では、水の中に入った瞬間に視覚や聴覚が遮断される。そのように、外的環境に影響されない状況が作り上げられた時に、独立した自分になるのではないかと考えた。しかし、これが「自分を感じる瞬間」といえるのかに疑問を持つようになった。自然の中で言葉で考えず、物を持たずに時間を過ごす時間を通じて、水の中にいるときや自然の中にいるときって「自分」という意識がほとんどないまま、「調和」しているのではないかと気づいたのである。荒谷さんの人間から意識を外すと環境になるというお話との繋がりにも参加者との会話を通じて気付かされた。意思があるものと繋がっているときに「自分」を感じ、意思がないものと繋がっているときに輪の一部として「調和」するのではないかと考えた。最初にこの問いを意識させられたことにより、自然と自分の考えを変化、発展させていくことが出来、その変化が言語できたため、私にとってとても印象的だった。
 
Daily Meditation & Yoga:日々の瞑想とヨガの時間

一、心の静寂を大事にしましょう
一、自分の思考や感情、記憶を観察しましょう
一、物事の大前提が何かを意識しましょう
一、自分と異なる意見や視点から学びましょう
一、共感を土台にした関係性を築きましょう

サマースクール中は上記のグラウンドルールが設定されています。毎朝の朝食前の時間には選択制のヨガと瞑想の時間があり、自己を観察すること、人間の内面と環境問題とのつながりを学びました。毎晩のジャーナリングの時間では、日々の気付きや学びを言語化して、参加者同士で自由にシェアをしていきました。

Local & Organic Meals:日々の「食」から知る「自然」
自然への想いをはせるきっかけとなる「食」の体験を提供すること。日々の食事は、現代人に残された数少ない「自然」との接点です。食材がどんな気候・環境条件下で、どのように育てられ、どう調理されるのか。本当に美味しい食事とは、自然の摂理に即して育てられ、調理されたものではないかとKOTOWARIは考えています。口に入れる食べ物を源に人間の心と身体は作られており、そうした意味では、食材も心身も全て自然の一部だからです。
自然の循環から生み出された食べ物の持つ生命力に感動し、その背後にある「自然」の原理原則が知りたくなる。KOTOWARIは「食」をそのような喜びと学びの体験として位置付けています。プログラム中は完全ベジタリアン食、食材は会津屈指の有機農家「無の会」からお米と野菜、お味噌を提供いただきました。